- 松永さんがセガへ入社して、最初に携わったタイトルは何だったのでしょうか?

世に出たもので、最初に関わったタイトルは『三国志大戦』です。
新人研修後に運良く新規立ちあげのチームに入れてもらったのですが、そこで『三国志大戦』の原案を提案したんです。それからしばらくして、メインプランナーとしてチームに入って、パイロット版を作って。
そこからの経験は、非常に大きなものになりました。

- その『三国志大戦』が世に出たときは、やっぱりそれまで趣味でゲームを作っているときは違う喜びがあったのでしょうか?

はい、ものすごく感動しました。
アーケードゲームはリリース前にロケテストを行うんですが、その感動がすごかったです。ユーザーさんがプレイに一喜一憂してくれて、「もっとこうすればいいんじゃない」、「このキャラのほうがいいよ」と盛り上がっている光景は、今でも思い出します。

- 別格の喜びがあったんですね。

趣味でゲーム制作をしていたときもプレイした人から感想をもらうことがあって、同じゲーム作りなのだから、その延長線上かなと思っていたんです。でも、別物でした。規模感が違うというか。
ロケテストでも何百人、実際に稼働すれば何万人というユーザーが遊んでくれるんです。
それになにより、最新の筐体が並んで、派手な演出が行われている光景が、自分ひとりでは絶対に作れないものだなという実感がそのとき強くあって。
プロが集まったから、ここまでのことができたんだなと。これはすごい仕事だなとそのとき思ったんです。


松永 純
松永 純

アイデアをみんなで磨くことで、
最終的には200点ぐらいを目指したい。
だからこそ100点からスタートする。

- プロとしてのゲーム制作の現場で大事にしていることはありますか?

あります。ひとつは、何か提案をするときは、当たり前のことに聞こえるかもしれませんが、必ず新しいアイデアを入れられるように努力しています。意外と新しさがなくても、提案というのは通るものなんですが、やっぱりユーザーさんに、「おっ!」と思ってもらいたいですから。

- ユーザーの想像を越えるものを?

そうです。やっぱり人が「すごい!」と感じるものは、それまでに見たことのないものだと思うんですよ。

- 確かにそうですね。

それと、必ず自分のなかでアイデアを100点だと思えるまで考え尽くしてから、提案をするようにしています。

- 自分の頭の中で、完成させてしまうのが良いということですか?

いえ、そういう意味では逆ですね。むしろアイデアをみんなで磨くことで、最終的には200点ぐらいを目指したいんです。でも不思議なもので、チームでの物作りというのは、100点の提案からスタートしないと、200点の完成品には絶対ならないんです。
例えば10点ぐらいの提案では、せっかく周りの人が懸命に高めてくれても、20点ぐらいにしかならない。それじゃ一緒に仕事をする仲間に対して失礼だし、チームで作る意味もないと思うんです。個人が出せる最高点が100点だとして、みんなで20点を作るくらいなら、個人で100点のゲームを作ったほうがいいですし。
だから、チームでゲームを作るなら200点を目指すべきだし、そのために最初のアイデアは、100点からスタートできないとダメなんです。

- それが責任でもあると?

そうですね、新しいことを提案する人間の責任だなと。逆にだれかが提案したものを磨いていくときは、1点でも2点でもプラスになればと思ってアイデアを交わすようにしています。でも口火を切る時は、とにかく考えますね。

- なるほど。

あともうひとつ重要なのが、やっぱり伝える能力です。自分の考えを人に伝えるための努力をいとわないことが大切ですね。「土下座してでも伝えよう」という執念が必要ですし、僕は新人のころに実際してました(笑)

- 本当ですか?

はい。新人の頃なんて、実績もなければ、理屈も持てていないわけですし。作れば絶対面白いと思える内容で、説明できることは全部して、それでも伝わらないこともあったので……。じゃあもう膝をつこうと(笑)。

- そこまでして伝えたいことがあったんですね。

三国志大戦の基本システムを作ってるときでしたね。さっき気持ちだけでは伝わらないみたいなことを言いましたけど、面白い理由は伝わらなくても、熱意が伝われば動いてもらえることはあります。もちろん、理解してもらえることが一番ですが、乱暴な言いかたをすれば、作っていく中で同じ方向を向ければさえすれば、その方法はなんでもいいんだと思います。